FXのスキャルピングの手法解説

スキャルピングの実践

トレードは1分足で行う

スキャルピングとはポジションを長く持たず、分単位で決済まで完了するトレードスタイルのことです。よって、メインで使うことになる時間足は、ほとんどの取引ツールでもっとも短い時間軸となる「1分足」です。

普段1分足を表示しない方は、まずは目まぐるしく動く1分足のスピード感に慣れることから始めましょう。1分に1本新しいローソク足が立ちますので、ごく短い時間での決断や操作が求められます。

長い時間足で相場の流れや効いているラインを把握

チャート

スキャルピングには「メイン仕様は1分足」ですが、それよりもっと長い時間足で相場の全体像を把握することも重要です。

1分足で表示できる期間は短いため、そのときの相場が上を向いているのか、下を向いているのか、あるいは流れがないのかの判断ができません。よって、15分足、1時間足、4時間足など上位のチャートを同時にチェックする事で、その時間帯、その日の動きを予想しながらトレードしていきます。

重要な経済指標は必ずチェックする

以下はYahoo!ファイナンスの経済指標です。

スキャルピングはファンダメンタルズ的な相場の分析は不要です。経済政策や政策金利、政治情勢などによる中長期の値動きを狙うのではなく、相場の波のごく一部を切り取っていくスタイルなので、ほぼチャートだけを見てトレードすることになります。

ただし、主要な経済指標や要人発言のスケジュール把握は必要です。瞬間的に大きく相場が動くため、それに巻き込まれないようにするためです。ほとんどの経済指標や要人発言は「2時間前」のトレードは控えましょう。

スキャルピング手法(相場の行き過ぎを狙う)

行き過ぎた相場はいつか必ず戻る

FXの本質は、通貨ペアを構成する2種類の通貨ペアの綱引きです。ドル円であれば、ドルと円はシーソーのように片方が上がれば、もう片方が下がります。そのため、ある通貨ペアが一方的に上がり続けることはなく、いつかは下がります。同様に、下がり続ければいつかは上がります

このように、行き過ぎた値動きはどこかのタイミングで修正されて元に戻るため、この動きを狙う考え方になります。

値動きが小さい時間帯が狙い目

この考え方を実行しやすいのが、日本時間明け方~東京株式市場が閉じる15時くらいまでの時間帯です。いわゆる東京時間と呼ばれる、強いトレンドが出にくい時間帯ですので、行き過ぎたところからの戻りが発生しやすいです

逆に日本時間の夕方以降は、欧州と米国の市場がオープンして値動きが活発になり、また影響力が強い経済指標もあるため、一度出た流れが続きやすくなります。こうなると行き過ぎたところからあまり戻らず、第2波、第3波になりやすいため、このトレードはうまくいかないことが多くなります。

上位時間足にトレンドがあるときには無理をしない

ただし、もっと長い時間足に明確なトレンドが出ている場合には、このトレードは危険です。例えば1時間足、あるいは日足などが継続的に上がっている、あるいは下がっている場合は、東京時間であってもその方向に進みやすいため、行き過ぎたところからあまり戻らないケースが考えられます。

効いている水平ラインとのコンビネーションが有効

上位の時間足で何回も値動きを阻んでいる水平ラインがある場合、そこでの反転を狙うことで、エントリーの確度を高めることができます。

一般的によく使われるインジケーター(1)エンベロープ

中央の移動平均線に対して、一定の比率だけ離れた位置に、ラインを引くインジケーターです。ラインはボリンジャーバンドのように上下2本引かれますが、ボラティリティによって幅が変化しません。

よって、現在の価格より行き過ぎている水準になったことを、視覚的に確認することができます。

一般的によく使われるインジケーター(2)移動平均線

いろいろな使い方がある移動平均線ですが、乖離(どれくらい離れているか)の判断基準にもなります。

移動平均線は、表示している時間足と期間により全く違う形になるため、有利な期間、正しい設定というものは存在しません。普段自分が表示している、慣れている設定の移動平均線から大きく価格が離れたときは、元の価格に戻る動きを狙っても良いでしょう。

一般的によく使われるインジケーター(3)RSIなどのオシレーター系

オシレーター系インジケーターは、相場の過熱感を表すものです。上がり過ぎ、あるいは下がり過ぎが判断しやすいため、反転を狙う基準に使えます。

オシレーター系には、RSI、ストキャスティクス、RCIなどいくつかの種類がありますが、デフォルトの設定だと相場が一方向に動き過ぎた場合には、どれも同じようなサインが出ます。自分で試してみて、しっくりくるものを使えば良いでしょう。

スキャルピング手法アイデア(2)発生した流れを追いかける

トレンドフォローは押し目買い、戻り売り

「FXの取引では、トレンドに乗るべし」とはどんなメディアにも書かれていることですが、トレンドフォローには実は2種類あることをご存知ですか?

  • 上昇中の一時的な下降、下降中の一時的な上昇を狙っていく「押し目買い、戻り売り」
  • 上昇中の高値更新で買い、下降中の安値更新で売る「ブレイクアウト」

上記の2種類があります。

どちらにもメリットがありますが、損失額を比較的抑えやすいのは前者の押し目買い、戻り売りです。

ロンドン市場以降が狙いやすい

相場に出ている流れを追うのがトレンドフォローですから、値動きに勢いが出やすい日本時間の夕方〜深夜の時間帯の方が適しています。

押し目や戻りとは、つまりトレンドの第2波、第3波を狙うことです。しかしトレンドに勢いがなければ長続きせず反転してしまうため、押し目や戻りが機能しません。

日本時間の夜は、日中に勤務している方にとって「仕事後」になるため、生活リズムの中にトレードを組み込みやすいメリットもあります。

上位時間足にトレンドがあるときに狙う

1分足より上位の時間足、例えば1時間足に明確にトレンドが出ていることが重要です

チャートの値動きは、上位足が優先される原則があるため、1時間足で上昇トレンドが続いているなら、1分足でも上昇圧力が強いと判断します。

一般的によく使われるインジケーター(1)ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドは非常に情報量が多いインジケーターといえます。中央の移動平均線は、傾きで直近のトレンドを判断したり、サポートやレジスタンスの役割になったりします。

また上下のバンドは、反転の目安になることが多い他、値動きに勢いが出ると幅が広がり(エクスパンション)、値動きが落ち着くと幅が狭くなります(スクイーズ)。

一般的によく使われるインジケーター(2)平均足

平均足はローソク足と外見は似ていますが、トレンドが出ているときには同じ色の足が連続出現しやすくなるように設計されているため、シンプルにトレンドの判断が可能です。

陽線が続いていれば上昇、陰線が続いていれば下降というルールが成り立つので、そのまま売買ルールに組み込めます。

重要なのは実質スプレッド

取引コストの影響が大きい

トレードをするチャートの時間軸が短くなるほど、勝ちトレードの利益と、負けトレードの損失がともに小さくなる傾向があります。1分足でトレードをするスキャルピングは、利益も損失も小さいです。

その反面、どのようなトレードスタイルでも取引コストは同じです。

つまり短期トレードほど、取引コストに対して、やりとりする値幅が狭くなるということ。これは取引コストの影響が相対的に大きいことを表しています。

重要なのは実質スプレッド

現在のFXにおいて、取引ごとに手数料が発生することはほとんどないため、スプレッドが実質的かつ唯一の取引コストとなります。

スプレッドとは、買値と売値の価格差のことで、買いが100.10円、売りが100.00円のように、投資家から見て買値は高く、売値が安く設定されています。つまり、投資家はスプレッド分マイナスになった状態からトレードを開始することになります。

上の例でいえば、売りが107.706、買いが107.710で、スプレッドは0.04です。

ただし、そのとき表示されているスプレッド通りの価格で必ず売買できるわけではありません。ここに約定力という要素が密接に絡んできます。

約定力とは、表示されているスプレッド通りに注文がどれだけ通るかを表す言葉です。ここはFX会社ごとに差があります。例えば、ドル円のスプレッドが0.3pipsと表示されていても、注文ボタンを押したときにスリッページ(スベること)が起きて1.0pipsで約定した場合、実質的に支払ったコストは1.0pipsということになります。

このように、表示されているスプレッド+発生したスリッページ=実質スプレッドと考え、取引コストは判断した方がいいです。

平常時、閑散時、非常時それぞれの約定力を把握

実質スプレッドは、時間帯によって大きく変化することも覚えておきましょう。

取引が活発な時間帯なら、売りも買いも大量に注文が相場にありますから、大きなスリッページは発生しにくいです。

逆に日本時間早朝など、取引が薄い時間帯だと、活発な時間帯よりはスリッページが発生しやすく、表示価格より不利なレートで売買する可能性が高まります。

ただし、経済指標の発表直後のような急激に相場が動いているときは、約定しにくくなり、結果的に取引コストが上がりやすくなります。

 

スキャルピングのポイント

スキャルピングのメリットをいくつかあげていきましょう。

ファンダメンタルズ分析をほぼ完全に無視できる

原則的に、長期間のトレードほどファンダメンタルズ(経済指標や国際情勢)の影響が大きくなると言えます。一方スキャルピングは超短期トレードなので、ファンダメンタルズ分析はほぼ不要です

主要な経済指標のスケジュールさえ把握しておけば、チャート分析だけでトレード可能。ニュースを読むことが苦手な人に向いています

トレード1回の損失は小さい

トレードが始まってから終わるまでの時間が短い、つまりポジションを持っている時間が短いので、毎回のトレードにレバレッジをかけてトレードをすることに向いています

また、きちんと損切りすることを徹底していればトレード1回の損失を低く抑えられる(大負けしにくい)ことも、たくさんの取引ロット数を投じやすい根拠になります。

つまりスキャルピングは、技術が伴っていれば資金効率が良いともいえます。1回のトレードで勝ち負けする金額が少ないので、チャレンジしやすいのもスキャルピングの特徴です。

ただし、これは上手なトレーダーの場合で、技術が低く勝てない状態でレバレッジをかけてトレードをすると、逆にすぐにお金がなくなってしまうので注意が必要です。

相場環境にかかわらず、1日のトレード機会が多い

相場の小さな上げ下げを切り取っていくスタイルなので、ほぼ毎日トレードの機会があると思って間違いありません。

機会の多さはもちろん収益の可能性につながりますし、短期間で何度もトレードを経験できるため技術的な向上も見込めます。

チャートに拘束される

逆にスキャルピングのデメリットもいくつかあります。

トレードの機会が多い分、それを生かせるタイミングは非常に短いので、すぐその場でエントリーしないと間に合いません。さらに、トレードを自動化することが難しく、決済も手動で行う必要があります

つまり、スキャルピングは「ながらトレード」がまず不可能であり、必ずチャートの近くにいて相場を監視している必要があります。

損切りができないと大変なことになる

他のどんなトレードスタイルより、損切りの重要性が高いのがスキャルピングです。

一度のトレードで得られる利益はわずかなので、相場が逆行した場合にはそれに見合った狭い値幅の損切りですぐに逃げないと、取り返しのつかない大ダメージを負うことになります。

目先の勝利を強引に追い求めるのではなく、逆行したらすぐにそのトレードは諦め、次のチャンスを待てるメンタルを備えましょう。

反射神経、動体視力がある程度必要

秒単位でのトレードを続けないといけないため、反応の速さは必要です。また、目まぐるしく更新されていく1分足の変化を追い続けるため、動体視力も求められます。

また、じっくり考える時間はなく、その場その場で決断をしていかないといけないため、判断力、決断力も大切。

スキャルピングは、スポーツのような側面があります。

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